強いAIの実現方法 ~実践的な作り方~

強いAIの実践的な作り方を検討しています。メイン記事に主張をまとめています。人工知能関係の書評もあり。なお、今後、任意団体として活動してみたいと考えており、手伝ってみたいという方は是非ご連絡下さい。詳しくは、メイン記事の7を参照下さい。

「人工知能はこうして創られる」(後編) 人工知能関連書評

人工知能はこうして創られる」(後編) 合原一幸編著 2018年 ウェッジ

 第5章は、アメーバ型コンピュータなどのナチュラルコンピューティングについてであり、慶応大学青野真士教授が担当されている。
 アメーバ型コンピュータとは、なんと、粘菌アメーバという実際の巨大単細胞動物に計算をやってもらうというもので、巡回セールスマン問題などが解けてしまうらしい。体を広げようとするけど光刺激があるとその部分だけ縮むことを利用し、上手いこと各光刺激の照射タイミングなどをフィードバック制御していくと、粘菌アメーバの動きが最適解探索になるということだそうです。
 これで思い出すのは、鳥や魚の群れが、単純ルールで形が創発される自律分散システムであるということで、アメーバの、俺は膨らみたいんだという性質と光刺激に弱いという2つの単純ルールからなにかが創発されるというのは、そういうこともありそうだという意味で理解できる。LIFEゲームにも似ている。
 粘菌アメーバのように、自然が計算していることを利用するのを自然知能と呼び人工知能と区別するそうである。ただちにすごい結果、産業、強いAIに結び付くかはなんとも言えないが、斬新な考え方であり、デジタルコンピュータの限界を越えたところで何かを生み出してほしい。
 ただ、チューリングノイマンを源流とするデジタルコンピュータに対し一見計算原理が違うが、例えば人間の脳の原理に近い革命的な知能の原理とかそういうことではないと思う。生物や自然の特性に含まれる単純アルゴリズムを利用した創発であり、粘菌アメーバの計算は恐らくデジタルコンピュータでのシミュレーションで再現できるだろう。その意味で、あるアドレスの値を書き換える、という単純な原理で、ハードウェアの種類に依らずあらゆる計算をしてしまうデジタルコンピュータはあらためて凄いと思う。ハードウェアとソフトウェアの自由度が高い。
 なお、本章でのチューリングマシンの説明は大変分かりやすい。
 ブログ筆者も以前から、滝の水が綺麗なカーブを描いていると、水が軌道を計算しているように見えていた。これも自然知能の発想なのであろう。

 第6章というか、最後は技術解説であり、「ディープラーニングとはなにか」ということであった。第2次AIブームの3層ニューラルネットワーク、リカレントネットワークと比べたディープラーニングの特色などが、100ページ近くにわたって分かりやすく解説されている。シグモイド関数でなく、ディープラーニングで信号消失が起りにくいよう正側は常に増えていくReLU、負側もちょっとは減っていくLReLU等、勉強になった。今後の発展として、アテンション、Generative Adversarial Network(GAN)という最新技術が紹介されているが、残念ながらブログ筆者はまだ理解できていない。
 なお、ブログ筆者のディープラーニングに対する理解は、従来3層以上では解が収束しなかったが、前処理を行うことで収束出来るようになった、特に画像については、人間の脳の一次視野に近い処理をしている、前処理(事前学習)はCNNが有名、ということである。
 今後の発展として、画像生成、言語と意味(!)、強化学習があげられている。画像生成は、レンブラント風の絵を書きましょうみたいなものかな。GANがキーということで、もう少し理解を深めたい。
 言語と意味、については、ブログ筆者が一家言ある分野であり、「意味は外界にある」ということが本書では一言もふれられていない。単語をベクトルで整理し演算を出来るようにしようというWord2Vec、知識ベース概念グラフ等が述べられていた。
 強化学習は、DQNやAlphaGoの話である。AlphaGoがトップ棋士を倒して一定の成果が出たと書いている。ブログ筆者としては、AlphaGoの凄さはむしろ、本来解空間が広いためAIは碁が苦手と言われていたが、実は解空間が広いことでAlphaGoがトップ棋士より圧倒的に強くなったことにあると思う。人間の脳と歴史で探索できていた領域より、はるかに広く深い領域をAlphaGoは探索できたのだ。それだけ碁の空間が広大であり、AlphaGoでないと探索できなかったのだと思う。