以下の二つの観点から、強いAIを作ろうした際には、脳にあたる部分だけではなく、外界と身体の準備が必要であると考える。今回はその(2)
(1)ロボティクス分野からみた身体の重要性
(2)意味は外界にある
結論:
人工知能が人間と同じように意味を扱うには、「外界」、および外界との相互作用をつかさどる「身体」が必要。すなわち、外界ー身体ーAIのシステムである。
(2)意味は外界にある
講談社現代新書「ロボットの心」において、チューリングテストの反論である中国語の部屋への反論として、柴田氏が以下の指摘をしている。
・ビールの意味は、ビール本体が持っており、中国語で呼ぼうがなんだろうが関係ない。すなわち、意味は外界にある
弱いAIが決して強いAIになれない原因の一つに、意味を扱えないということがある。例えば、ワトソンがクイズ番組で優勝したとしても、ワトソンは入力に対する出力を提示しただけであり、その出力が正解であるとか、クイズ王を倒したというようなことは、周りの人間の解釈であり、クイズに勝ったという意味は周りの人間が与えている。クイズに対する答えについても、意味を考えて答えたわけではなく、機械学習を含むプログラミングの成果であり、ワトソンが意味を扱っている訳では無い。
柴田氏の主張は、チューリングテストでビールの話をしてまともに受け答えをしたとしても、実態としてAIがビールを飲んで酔っ払ったり苦いと思ったわけでは無いので、AIはビールの意味を分かっていないということである(単純化し過ぎているかもしれず、その責は筆者にあり、柴田氏にはありません)。
すなわち、AIがビールの意味を理解するには、ビールを飲んで酔っ払うというか、人間と同じ相互作用をビールとの間で確立できる身体と、ビール本体=外界が必要であるということだ。
まとめると、意味を扱うシステムは外界-身体ー脳の3つで成り立っているということである。これは、文部省特定領域研究「移動知」で、環境-身体-脳の相互作用がテーマだったことにも通じる。
(1)ではAIには身体が必要と述べたが、身体は外界との相互作用に必要な要素であり、正確には、外界-身体-AIが必要である。
ブルックスは身体の必要性について環境との相互作用のためと言っており、まさしく上記の事を主張している。