強いAIの実現方法 ~実践的な作り方~

強いAIの実践的な作り方を検討しています。メイン記事に主張をまとめています。人工知能関係の書評もあり。なお、今後、任意団体として活動してみたいと考えており、手伝ってみたいという方は是非ご連絡下さい。詳しくは、メイン記事の7を参照下さい。

「シンギュラリティ 人工知能から超知能へ」 人工知能関連書評

「シンギュラリティ 人工知能から超知能へ」 マレー・シャナハン 2015 NTT出版

 

 原著のタイトルはThe Techological Singularityである。シンギュラリティを一躍有名にしたカーツワイルの著作では無い。AIのこれからの発達に主眼を置き、シンギュラリティを越えて超知能が実現する世の中について述べている。ただし、超知能の具体的な作り方が書かれている訳では無い。ガイダンス的な記述はある。

 人間並みの知性を実現する方法としてまず挙げられるのが「全脳シミュレーション」である。その条件として、脳のマッピングと神経シミュレーションがある。それをまずマウスでやる案が書かれている。マウスレベルの脳であれば現実的に出来そうな気もするので、工学的に着実なステップを提唱しているところが興味深い。神経シミュレーションを実現するハードウェアとしては、GPU,神経形態ハードウェア、量子ドットセルオートマトン、等がある。
 次に来るのが、ロボット工学でAIの身体化を図ること、そして、ブログ著者の主張に非常に近い、バーチャル身体化になる。ロボットでの身体化の手法は、神経シミュレーション側の神経とロボットハードの接合、脳の可塑性によるハードウェアへの適用等があげられる。
 バーチャル身体化は、身体と外界を仮想空間にすることであり、ブログ筆者の主張に近い。ただし、カーツワイルは「本物と見分けがつかないほどの高分解能」を要求しており、ブログ筆者の主張である「記号レベルでの再現」とは大きく異なる。実践的に、強いAIを開発する見込みは、この違いにある。
 導入部分のまとめとして、マウスレベルの脳の実現により、人間、超知能への道が開けるだろうと述べている。

 以降は、超知能、AIと意識等のテーマで、出来るだけエンジニアリング的な発想で議論している。話は飛躍していくが、いちいち論点が具体的であり、西洋人のリアリストな考え方が伝わってくる。十分な時間があれば、自然がまさしく成し遂げたように、力づくで自力で知性を実現できるという指摘も面白い(自然がなしとげた知性とは人間のことである)。

 一番印象に残ったのは、AIの発達が、我々の文明をさらに豊かにすると確信していることだ。インターネットにより生活が大きく変わったように、AIでもさらに便利になっていくだろうという、いわば、楽天的な発想である。もう満足して生活しているから、TVのようなドラスティックな発明は無いだろうという論調は、日本ではここかしこに見られるが、西洋人は、さらなる発達を信じて、前向きに取り組んでいるのだと実感した。