強いAIの実現方法 ~実践的な作り方~

強いAIの実践的な作り方を検討しています。メイン記事に主張をまとめています。人工知能関係の書評もあり。なお、今後、任意団体として活動してみたいと考えており、手伝ってみたいという方は是非ご連絡下さい。詳しくは、メイン記事の7を参照下さい。

強いAI プログラム構想 まとめ

 海外出張等もあり、また1ヶ月ほど更新が出来ていなかった。ただし、あらかた準備は整ったと思われるため、強いAIを構築するための基本原理の有効性を示すためのプログラムの構想をまとめる。

 基本原理として、前回提示した内容は以下の通りである。

・外界モデル、身体モデル、脳モデルの3つが相互作用すること

・探知→行動を原理とすること

・エージェントは言語能力を有すること

・アーキテクチャは十分に複雑であること

 なぜ言語能力を有する必要があるのか、言語とは何か、については、まとめて別項目にて示すこととする。

 第2の、探知→行動を原理とする、ということは、前回の「回路の中の精神」に従えば、脳が並列計算機でありほぼリアルタイムに演算結果が出てくることと関係する。そして、この原理が言いたいことは、古典的AIのように判断をプログラムするなということである。すなわち、強いAIの目指すところはプログラムされていないことを出来るというところにあり、判断モジュールを加えるとすぐさま弱いAIと化してしまうのだ。

 この第2の原理と、第4の原理である十分に複雑であることは、まさしく脳モデルが有すべき特長になる。脳には判断モジュールは無いが、脳の動作としては複雑になる必要がある。従って、脳モデルは学習によってのみ複雑になるべきである。これを第4の原理に付記する。

 第4の原理であるアーキテクチャは十分複雑であること、は、脳、身体、外界全てに当てはまる内容である。ただし、今作ろうとしているシミュレーションは、まずは原理の有効性を示すという段階に留まるため、最終的に必要とされるまでの複雑さは当初は確保できないであろう。ある程度の複雑な状況の中でのエージェントの成長度合いから、これを複雑にすればすごいことになりそうだ、ということが示せれば成功である。

 さらに、第5の原理として、エージェントは欲求を持つ、ということを追加しておく。意思を持つということだ。弱いAIはプログラムされたことしか出来ないので意思を持たない。欲求に伴い、報酬系も有することになるであろう。

 上記をまとめると、白紙であり学習により複雑化していくことが出来る脳モデルに、学習をドライブする欲求を結び付け、複雑な環境下で人工生命として活動させていくという、従来から行われていておかしくない内容を進めようということである。

 従来との違いは、エージェントに言語能力を持たせること、外界、身体も言語的に構築すること、ロボット工学における構成論的アプローチの手法を取り入れ、強いAIには身体と環境が必要であるという確信を持っていること、になる。
 身体と環境があることで、弱いAIの弱点である、意味を扱うことが出来る。ここを理解しておくことで、漠然と身体や環境を作るのではなく、強いAIの出現に必要な身体モデル、外界モデルを作ることが出来る。

 最後に、信念を再掲しておく。

  • 生物が複雑な行動をするのは、環境が複雑だからであり、人間もその延長上にある。
  • 大容量の脳と複雑な環境の相互作用により、生物のアーキテクチャがシンギュラリティを越えたのが人間の知性といえる。
  • 従来のように脳を言語化するのでは無く、外界及び身体を言語化すべき。 

 白紙だった脳モデルは、環境に身をおくことで複雑になっていき、十分に複雑になることで強いAIとなる。そういう意味では、広義の機械学習と言えるかもしれない。また、環境は、言語レベルで複雑であれば良い。


 さて、原理の再整理に紙面を要したが、以上をもとにプログラム構想をまとめる。 機能ブロック図は、以前示した通りである。

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機能ブロック図

 

  1. 原理検証プログラムの目指す範囲
     理想的には、外界モデル、身体モデルは辞書レベルの内容は全て反映するようにすべきだが、原理検証の段階ではそこまでは全く到達できない。
     食べ物、敵、昼夜、地形、上下関係等がある世界として、これでは猿山程度の世界かもしれないが、人類史で言えば狩猟時代もこの程度であり、言語活動があることで、何らかの創発が観測できると期待する。

  2. 外界モデル
     食べ物、敵、時間の経過と昼夜、地形等、外界にあるものをモデル化する。エージェントが活動する環境である。オンラインRPGの舞台のようなイメージである。ただし、既存のツール、例えばUNITYを使ってしまうと、必要なモデルにならないように思える。外界モデルは全て身体モデルとリンクし、食べ物であれば、身体モデルにおける複数のセンサ(味覚、視覚、消化器)と連動しなくてはならない。食べ物はいくつか種類があるが、センサへの反応が違うことで違う種類の食べ物として定義される。意味とは差異である。

  3. 身体モデル
     外界モデルにリンクした身体(センサ、アクチュエータ、ボディ本体)とする。意味とは、外界モデルが身体モデルにもたらす作用であり、従来の弱いAIでは扱うことが出来ない。本ブログの提唱モデルのように、意味を扱うには外界と身体が必要なのだ。

  4. 脳モデル
     外界、及び内部状態からセンサ群への入力を受け、学習結果と欲求に基づき行動する。学習によってのみ複雑となり、十分に複雑になる容量をもつこと。ただし、原理検証段階では複雑さは限界があるものとする。
     学習モデルへの入力は、身体モデルにおけるセンサが担っており、センサは外界の状態、及びボディの状態を脳モデルへ入力できなくてはならない。


 以上をスタートラインとして、次回以降、具体的なプログラムの構築にかかっていく。ただしその前に、プログラマを募集しなくてはならない。次回、プログラマの募集要項を示す予定である。