以前、脳モデルをどうするのかの検討を試みたが、なんらかの成果をあげるには、当初の目論見通り、外界モデルと身体モデルを作っていき、脳モデルは実際に動かしていくしかなさそうという結論になった。
従って、話を前に進めるため、以下を整理していく。
- 強いAIを実現するための基本原理を整理する
- 簡易なモデルにおいて、原理の有効性を示す
基本原理は、以下の4つとする。ブログで述べてきたことを、アーキテクチャとして構築できるよう、かつ本質を捉えるように整理した。ここで、エージェントとは、身体モデルと脳モデルで構築される、独立して行動する一単位である。
- 強いAIのアーキテクチャは、外界モデルー身体モデルー脳モデルを組合せ構築しなくてはならない。
- 個々のエージェントは探知→行動を原理とする
- エージェントは言語能力を有する。
- アーキテクチャは十分に複雑であること
以下は補足、あるいはアーキテクチャの構築方針である。
1-1
人間は意味を記号で扱っているため、外界モデル、身体モデルは記号レベルで再現出来れば良い。知能を工学的に実現するには、脳では無く、まず外界と身体を記号化するべきである。
4-1
生物が複雑な行動をとるのは、環境が複雑だからである。従って、知性と呼べるほど複雑な行動をとるためには、外界モデルと身体モデルは十分に複雑であるべきである。脳モデルは、最初から複雑に作り込む必要は無いが、結果として十分複雑に動作するべきである。
以上の内容は、以下をバックグラウンドとしている。
- 人工知能には身体が必要である(ファイファー他)
- 意味は外界にある(柴田正良)
- 意味とは差異である(ソシュール)→外界、身体もモデルで良いことが分かる
- 人間は、記号を知っている対象しか認識できない(ソシュール)
- 判断は不要であり、探知→行動のループにするべき。生物が複雑な動きをするのは、環境が複雑だからだ(ブルックス)
次回以降、4つの基本原理を元に、プログラム構想をまとめていく。
ブルックスが身体性についての原理を論文で発表した時、ロボット学者が好む数式表現等を用いておらず学術的ではなかったため、眉をひそめる人も多かったと聞く。上記の4つの基本原理も全く数式では無いが、その逸話には勇気づけられる。
ブルックス自身は、知能を実現するための数式表現が見いだされていないとその著作で述べているが、自分の当時のことを思い出したりはしないのだろうか…
(追記)
生き物の行動原理である探知→行動のループが複雑になり、シンギュラリティを越えることで人類が知性を獲得した、というストーリーである。
探知→行動の間には、何らかの回路は入る。その回路は脳モデルであり、最終的には十分複雑になる必要があるが、判断モジュールとして作りこむのではなく、探知→行動の回路が複雑になったものとしていきたい。