作って動かすALife 実装を通した人工生命モデル理論入門
岡 瑞起、池上 高志、ドミニク・チェン、青木 竜太、丸山 典宏 著
2018年07月 オライリージャパン
オライリージャパンの宣伝が目に入り、最近買ってないなぁと思って最近の新刊リストを眺めていたら、タイトルを見て、目次に身体性とブルックスのサブサンプションアーキテクチャのことが書いてあり、慌てて購入した。Amazonのお急ぎ便をキャンセルし、本屋に出向きました。
東大池上研究室を中心として、人工生命の最先端の状況を実践的に示してくれる。人工生命の本は、かなり古いものしか持っておらず、助かった。というか、自分がやりたいことが人工生命でもあるので、どきどきしながら読んでいる。
第1編はチューリングやサイバネティクス等の人工生命へつながる歴史。第2編はオートマトン、ライフゲーム、チューリングの業績の一つである、生物の印象的な縞模様、まだら模様を生成するメカニズム等。ライフゲームと言えば、emacsに入っている隠しコマンドで知っていた。アルゴリズムとプログラムの詳細な説明があり、実践的で分かりやすい。
第3編は個の形成と自己複製について。厳密な自己複製では無く、緩い自己複製を行うことで逆に環境に対しロバスト性を有することが出来るとのこと。細胞膜を受動的に生成する仕組みが単細胞生物としての個を確立しているという指摘が面白かった。
第4編は群知能。実はブログ筆者の20年以上前の卒論も、マルチエージェントシステムでの強化学習による最適パターンの自己創発というもので、群知能は昔から関心がある。本書では、ボイドモデルの紹介に多くのページをさいている。また、群知能が大型化することでイノベーションが生まれやすいという見解が述べられている。人間の創造性が集団知にあることを示唆しており興味深いとのこと。
第5編が、身体性とサブサンプションアーキテクチャである。なんとなく、サブサンプションアーキテクチャで高層ほど高度な判断を行うみたいな記述があり、ブログ筆者とは見解が異なる。身体性について、ブルックスが述べていること以外のことで述べられているのは、脳と身体が共に進化する共進化という概念である。ブログ筆者としては、ブルックスの意見から導きかれることは別のページではっきり述べているので、ここでは繰り返さない。付属のpyプログラムで、サブサンプションアーキテクチャを実装して試せるのが大変ありがたい。
前半はここまで。第6編以降に進化等も含めた複雑なALifeの最新状況が語られるので期待したい。
なお、本書のpyを動かそうと思って、初めてpyにふれた。ブログ筆者はC言語の使い手なので、行列の扱いが簡単になり便利と思いきやファイルの書き出しに苦労するなど、さすがに慣れないと違和感がある。pythonに慣れるべきなのだろう。
また、Windows7で使ってみたが、本書のプログラムではVisual関係でエラーが出て、結果のビジュアル表示が出来ない。救援を求む。以下がエラー内容。