強いAIの実現方法 ~実践的な作り方~

強いAIの実践的な作り方を検討しています。メイン記事に主張をまとめています。人工知能関係の書評もあり。なお、今後、任意団体として活動してみたいと考えており、手伝ってみたいという方は是非ご連絡下さい。詳しくは、メイン記事の7を参照下さい。

「ブルックスの知能ロボット論」 人工知能関連書評

ブルックスの知能ロボット論」ロドニーブルックス著 2006年 オーム社

 ブルックスの著作で、唯一訳されているものだと思う。
 MITのコンピュータ科学人工知能研究所(CSAIL)所長を務め、ルンバを開発したiRobot社を創業、今はRethink Roboticsにて、顔のある産業用ロボットを開発している。

 そのブルックスの、少年時代からMIT時代を経てiRobot社時代のエピソード、自身の考え方が述べられている。探知⇒行動が生物の本質である、というのは、タイのどっかにこもっている時に思いついたとか(タイじゃなかったかな)。

 ルンバは地図を作らないという話があり、ブルックスの手を離れてからは分からないが、もともとはブルックスが庭で使っていた芝刈り機が地図を使うタイプであまりにバカであり、絶対に地図は作らないと決めたとか。

 また、有名なロボット学者であるハンス・モラベックとシェーキーの開発に従事し、カメラで画像を取得してじっくり考えてからもっそり動く動作を見て、考え方が間違えていることに気付いたとか、ホンダのアシモは操り人形だとか述べている。ホンダに対しては、頼まれて講演に行ったのに、ホンダが自分達の研究を一切紹介しなかったことで嫌いになったとのこと。最近は知らないが、アシモのショーでお別れで手を振ったりするとあたかも知能があるかのように見えるが、実態は操り人形であるのに一般人に誤解を与えよろしくないとのこと。

 読み物としても面白いが、本書を読むことで、知能とは環境との相互作用であるということが、分かりたい人には分かってくる。もともとの発想は、1950年代のグレイ・ウォルターのタートルロボットがヒントになっており、単純な赤外線センサとモーターだけで、バックして巣に入れたりして、モラベックのロボットより知的に振る舞っているのである。

 ブルックスの名を有名にした6本足の昆虫ロボットのゲンギスは、6本の足が勝手バラバラに動きながら、障害物を乗り越えていく。障害物を立体視とかレーザスキャンで形状を認識し、6本足それぞれの関節について連携させた動作計画を作ってから動いたりしていない。それでいながら、1991年のロボットなのにきびきびと動く。

 記号論的アプローチによる人工知能に道が開けないことから、本書で紹介された、探知⇒行動を徹底することが知能への道だと筆者は信じている。常識的なロボット学者は、どうしても間に「判断」を入れたくなってしまい、この「判断」の箱を外すことが出来ない。

 アシモを例に出して申し訳ないが、2足歩行で偉大なブレークスルーを成し遂げたものの、それ以降がいけなかった。まさしく、ブルックスが採用しなかった、階段をスキャンしてマッピングし、行動計画を立てて動く研究をしていたと聞く。

 なお、この本の書評で、日本のロボット業界はブルックスのはるか先を行ってしまったという書評がネットに残っているが、非常な勘違いであることを申し添えておこう。